2004年9月13日
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山口県立萩美術館・浦上記念館]のサイトに素晴らしく充実した浮世絵のアーカイブがある(収蔵作品検索システム→絵師名一覧)。江戸から昭和まで、菱川師宣から伊東深水まで、有名・無名の数多くの絵師の作品が、長辺800ピクセルの画像で公開されていて、時間を忘れて江戸と近代の木版画の広がりを体験することができる。なかでも嬉しいのは、最後の天才浮世絵師などと評されることの多い月岡芳年のコレクションが抜群に充実していること。江戸末の爛熟・退廃と新日本画の繊細・巧緻をともに体した芳年の絵は、一般に高価な画集でしか接することができないから、このアーカイブの存在価値は高い。特に傑作の呼び声高い「新形三十六怪撰」のシリーズは必見。多彩な「月百姿」のシリーズも、ここではすべて見ることができる。
もう一つ、このサイトで嬉しいのは、『富嶽百景』『北斎画譜』『北斎漫画』という、北斎の3種類の絵本が公開されていること。最近人気の『北斎漫画』も面白いが、個人的には『富嶽百景』に尽きない興味を感じる。浮世絵アーカイブ方ではもちろん北斎の代表作「富嶽三十六景」を楽しむことができるのだが、それにも増してこの単色刷りの『富嶽百景』のシリーズは面白い。三十六景の後に作られた百景で、北斎は面刷り主体の浮世絵では追求しきれなかった「絵組み」の面白さ、形と線による風景構成のバリエーションといったものを究めようとしたように思えるのだが、どうだろうか。