2000年4月20日
有珠山の噴火が続いている。学者の予測によると、これから溶岩ドームが形成されるという線が濃厚らしいが、平成新山誕生までには、まだ相当に長い時間がかかるのだろう。今回の噴火についてよく耳にするのは、事前に周辺住民の避難が行われたという点で、画期的だということだが、それともうひとつ、インターネット普及後の最初の本格的な噴火として、ネットを通してさまざまな情報が流されたという点でも、記憶される噴火になるのではないかと思う。たとえば、[
有珠山火山活動情報リンク集]を見れば、そうしたネット上の情報の充実ぶりが実感できるだろう。情報の多くは当然、防災面からのものだが、科学的な情報も大量に流れている。
1万人を超える人が避難を強いられた災害のさなかに、このような表現は、不謹慎の誹りを免れないとは思うが、人にある種の感動を与えるという点で、火山噴火に勝る自然現象は少ないのではないか。アメリカにトルネードマニアがいるように、おそらく火山国日本には“火山マニア”あるいは“噴火ウォッチャー”と呼ぶべき人間が多いはずだ。というのも、僕自身がその傾向を多分に有しているからで、記憶しているだけでも、前回の有珠山や秋田駒ヶ岳、鳥海山、伊豆大島、三宅島、御岳、そして記憶に新しい雲仙普賢岳まで、幾度かの噴火を一種マニアックな関心で見つめてきたものだ。その際の情報源は、これまではほとんど新聞だけだったわけだが(テレビは映像のみ、科学的な情報はまったく期待できない)、今回はインターネットによって、一般の人間が得ることのできる情報量が飛躍的に増えた。たとえば、地上と空からの迫力ある噴火の写真はもちろん、正確な火口や断層の位置図、さまざまな解析を加えた衛生写真、地殻変動のデータ、火山灰の顕微鏡写真など、これまでは一部の学者しか知ることのできなかったデータが、ネットで簡単に手に入る。そして、それを分析・解釈する専門家のナマのやり取りを傍聴することだってできる。たとえば、有名な火山のページ[
千葉達朗の火山ページ]の掲示板[
ある火山学者のひとりごと]には、刻々と専門家からの書き込みがされていて(時には勇気ある素人の発言も)、錯綜した火山現象の勘所がわかり、噴火直後から毎日欠かさず読んでいる。このところニュースで聞くことが多くなった火砕サージなんていう新しい言葉も、ごく初期からやり取りされていたし、最近では昭和新山のミマツダイヤグラムにならったGIFアニメが飛び出したりと、とても充実した火山学の実践勉強の場になっている。また時に、海外のすばらしい火山ページがリンクされたりするのもうれしい。そのひとつ、[
Etna Ice- and Ringworld]では、まるで白昼夢のような忘れ難い写真を見ることができた。