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2000年4月12日

 小熊善之さんのウェブサイトのなかの、[哀愁日記]を読んでいて、こんな一文に出会った。
ちなみに、JIS X 0208で横棒に見える記号は、長音符号、数学のマイナス、ハイフン、全角ダッシュ、罫線(細太二種)の合計六種類。当然のように私は全て目視で区別出来るが、これは別に変態技でもなんでもなく、一般技能である。
 虚を突かれた思いで、思わずメモって、後でコード表を見ながらエディターに書き出してみると、確かに6つの横棒が並んだ。こんな具合だ。
ー  (長音符合)
―  (全角ダッシュ)
‐  (ハイフン)
─  (罫線細)
━  (罫線太)
−  (マイナス)
 このうち、長音符合とマイナス、ハイフン、それに普段ほとんど馴染みのない罫線太は、まずよほど駆け出しの人でなければ間違って使っていることはないだろう。問題は、全角ダッシュと罫線細の違いだ。パッと見は、この2つまったく同じに見えるのだが、2文字並べてみると、
――  (全角ダッシュ×2)
──  (罫線細×2)
 あらら、違うじゃない。全角ダッシュの方が微妙に短くて、真ん中にほんの少し隙間が空いてしまうのだ。そこで、はたと思い当たった。鏡花やら何やらの入力をしていて、2文字取りのダッシュがいつも真ん中でかすかに途切れていて、違和感が残ったのはこれだったのだ。罫線細でないと完全な棒は引けないのか。で、さっそく書庫のテキストの修正にかかろうとして、寸前で思いとどまった。でも、あの文中の2角取りの棒は、やはりダッシュなんじゃなかろうか。罫線細というのは、初期のワープロで図形の部品を並べて表を作ったりするために設けられた字形で、「└」やら「┬」といったものの仲間だ。そんなものが文章のなかに入ってくるのはおかしいんじゃないか。しかし、それを使わないと完全な棒線は引けないし…。
 ところが引けるのである、フォントによっては。あれやこれややっていて発見したのだが、なんとフォントによって、全角ダッシュの長さが違うのだ。MSゴシックでは2角並んだ全角ダッシュは完全につながっているし、僕が持っているダイナフォントもそう。しかし、MS明朝や富士通のFC系のフォントではとぎれている。このページはMS明朝を指定しているから、ブラウザの設定でそれに従ってくれている人は上の全角ダッシュと罫線細の違いをすんなり飲み込めたはずだが、MSゴシックで表示している人は、きっとこいつ何を言ってるんだと頭をひねっていたはず。MSゴシックでは2角ダッシュはつながっているのだから、こんな具合に。
――  (全角ダッシュ×2)
 いよいよ話はややこしくなった。この2つ並ぶと途切れる全角ダッシュは、というかそのような全角ダッシュを表示するフォントは、間違いなのか。一方、MSゴシックの全角ダッシュと罫線細は(少なくともこの程度の大きさでは)まったく同じ字形ということなのだと思うのだが、だとしたら上の小熊さんのすべて目視で区別できるという言葉はどういうことになるのか。しかも、この議論には重大な手落ちがあって、他のOS、たとえばMacではこれらの点はどうなっているのか、僕には確認するすべがない。
 いろいろ考えて、というか考えるのを諦めて、とりあえず書庫のテキストは全角ダッシュを使い続けることにした。あれはやっぱり罫線ではなくダッシュなんだから、ダッシュが正しいのだと思う。Windows環境ではテキストの表示はMS明朝の独壇場なので(けっして表示が美しいからではなく、あまりにその他のフォントの表示がひどいから)、2角ダッシュは途切れる。それが嫌な人は、MSゴシックを使ってください。まあ、そこまでこだわる人もいないか。