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1999年12月22日

 [二神のホームページ]というおもしろいサイトを見つけた。中世の伊予で、松山市沖の二神島を本拠地として活躍した豪族二神氏。その末裔である二神姓を名乗る人たちが、自分たちのルーツをたどろうと結成した研究会(現在は「準備会」の段階にあるらしい)の活動をくわしく紹介したサイトだ。もちろん制作者自身が二神姓の人で、そもそもこの人のウェブでの呼びかけが、各地に散らばった二神氏を糾合し、系譜探しに向かわせる原動力となったらしい。その辺りの経緯が、二神氏に関連する地誌や史実とともにくわしく書かれていて、興味深く読むことができる。「準備会」に参加している大部分の人は、インターネットに直接触れる環境にはない人のようだが、初動の段階ではウェブのインパクトやEメールの簡便さが大きな力を発揮したという。デジタルとアナログの両メディアがない交ぜになったコミュニケーションの広がりのプロセスは、メディア研究の材料としても、おそらく格好のものに違いない。
 そうした二神氏関連のページ以外にも、このサイトには興味深いページがあって、たとえば、愛媛県内の70を超える中世の城跡を写真付きで紹介したページは、城跡ファンにとっても垂涎の内容だろう(「城郭」あるいは「城跡」は、ウェブでも活発な情報発信が行われている歴史的テーマのひとつだ)。また、伊予の中世史年表も、全国・伊予の動きと、二神氏を含んだ伊予水軍の動きの、マクロ・ミクロの二段構えで構成されていて、その目配りの細緻さは歴史ファンを唸らせるに足る内容だろう。制作者の関心は二神氏を軸に、伊予の中世史全体にまで及ぼうとしている。
 [二神のホームページ]は、自分たちの足元から手触り確かな歴史を掘り起こそうとしている人たちの、いきいきした関心のありようが感じられるページだ。そして、ウェブというメディアの、(国際的な情報共有の機能とは別に)地域文化の再認識と保存の装置としての可能性を感じさせてくれるサイトでもある。