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1999年11月2日

 メールマガジンの[日本文学・テキスト情報]で、奈良女子大学の[画像原文データベース]に松浦武四郎の「知床日誌」があることを知り、さっそく読みに行ってみた。このサイトは、以前、本居宣長の「菅笠日記」を探してたどり着いた覚えがあるが、その時はテキストの種類はさほど多くなかったと思う。現在では、江戸時代紀行文集として27点を収めているほか、江戸・明治の50点を超える女性関連資料(主に女性のために書かれた教訓本・ハウツー本の類だと思う)や、古い教育雑誌・家庭雑誌も電子化して公開している。
 で、「知床日誌」だが、行ってみてちょっと困った。このデータベースは資料の扱いに非常に慎重で、公開されているテキストは、版本の画像とフレームでセットになっている。つまり版本そのものの写真画像を見ながら、テキストを読める仕組みだが、そのテキストが版本を忠実に再現していて、句読点のないことはもちろん、行替えまで踏襲していて、すんなり読める体裁ではないのだ。
 もちろん、一次資料の版本そのものを画像という形で保存しながら、電子化しようというこのサイトの姿勢は、圧倒的に正しい。 なぜなら、このページを見れば、希少な版本を持っていなくても、やろうと思えば「知床日誌」が出版できてしまうのだから。持てる者と持たざる者の差をなくす――インターネットは貴重本をめぐる機会均等も実現しようとしている。(ただし、営利目的での利用は禁じているから実際の出版は無理)素人が読みにくいからといって文句を言える筋合いではない。ただ、困った。僕は幕末の蝦夷地の探検者で、明治政府のアイヌ政策に異をとなえ、晩年は僕も好きな大台ヶ原の地を愛したという、松浦武四郎の探検記を読みたいだけなのである。(そんなら本を買え?ごもっとも。でもこの手の古書は値が張ると相場が決まっている)
 仕方がない。テキストとセットになった画像の方は、表示に時間がかかるのでご遠慮申し上げ、テキストフレームだけをウィンドウに表示して、1枚ずつ保存。それを後で一つのテキストにコピー・ペーストして、そして暇な時に句読点を打ったり、改行を外したり入れたり、読みやすく成形していくことにした。
 でも、そういえばわがライブラリーには、同じように成形を待っている、200キロバイトの「拾遺愚草」のファイルがあったっけ。