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1999年10月29日

 [倉田わたるのミクロコスモス]のなかの、抜群におもしろい日記ページ[廃墟通信]をまとめ読みしていて、こんな表現を見つけた。

…手塚治虫の細かいエッセイや談話や講演や雑誌グラビア記事を拾っていくという、末期的症状詰めの調査。…

 これは「見せ消ち」とかいう、昔の写本などによく見られる、原本の誤りを正しながら、誤りそのものをも保存するテクニックだ。ただここでは、本来の用法とはちがって、事柄を2方向から表現する手段として使われている。「詰めの調査」という一般的な方向からの表現に対して、見せ消ちされた「末期的症状」という自嘲的な方向からの言葉が、ツッコミを入れて、いい効果を出しているのだ。ふーん、こんなやり方があったのか、という感じ。このテクニックがどれだけ普及しているものなのかは知らないが、窮屈なHTMLにもこんなゲリラ的な活用法があること、それを見事に考案してしまう人がいることは、実に愉快なことだと思った。