1999年10月25日
しばらくアクセスできない時期があった長崎大学附属図書館の[
古写真オンラインデータベース]だが、この夏前ぐらいから再開されていたらしく、ひさしぶりにのぞいてみると、以前よりかなり応答が早くなっていた。この充実した画像アーカイブは、僕のようにかつての日本の美しさにノスタルジーを感じて止まない人間には本当にうれしい存在だ。3500近い写真の数もすごいし、地域・キーワード・撮影者や保管者で検索できるシステムも使いやすい。個々の写真が小さく、画質のよくないのが玉に疵だが、フォトレタッチソフトで少しいじれば見やすくなる。これまでは主に大阪・京都・神戸の写真を、アクセス時間を気にしながら収集していた。地元神戸のまだ農村の雰囲気が濃い原風景や、車でよく通る有馬街道が細々とした杣道だった頃の写真、上町台地から見下ろしたと思われる、まさに瓦薨天に接する大阪の風景、「曾根崎心中」にも名前が登場する今はない蜆川の写真など、いろいろ楽しい発見があった。今回は、サーバーの応答が早くなったのを幸いと、245点あるという中部地方の写真を閲覧してみた(因みに、地域別の写真数は、北海道29、東北36、関東1706、中部245、近畿848、中国46、九州544)。あるある、いろいろ面白そうなのがある。多いのはいかにも外国人が喜びそうな(これらの写真は本来外国人向けのお土産写真として撮られたものだ)富士山関連の写真だが、僕には中山道のものが興味深かった。街道から見た寝覚ノ床や木曾ノ桟あたりの木曽川は美しく、昔の人は贅沢な旅をしていたものだと思う。「鳥居峠と奈良井宿」というのもある。奈良井といえば泉鏡花の「眉かくしの霊」を思い出すが、あれはもう鉄道が通ってからの話で、ここではまだ人は徒で鳥井峠を越えている。峠の茶屋やお宮の写真もある。それらは今どうなっているんだろう。古い写真は人をはるかな思いに誘ってやまない。
最近は古写真関係の出版物も増えてきたけれど、これだけの写真を網羅するのはまず不可能だろう。ウェブだからこそ出来た、存在価値の高いサイトだと思う。ここは、なつかしい日本の面影の宝庫だ。