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2004.4.10願教寺山

 山頂からアイゼンで下る。
 見上げる斜面にはシュプールが楽しげな弧を幾つも描いていて、歓声を上げて駆け抜けて行った山スキーヤーたちの姿が見えるようだ。
 いつかは俺もと遅まきながら始めたゲレンデ練習はいまだものにならず、石徹白の山々の伸びやかな斜面もひたすら這いずるばかり。
 来年こそはスキーを駆ってと、とぼとぼ下る願教寺の尾根と谷は、しかし雪を彩る流線の千変万化の妙と、青空に映えるダケカンバの瀟洒が喜ばしい。
 立ち止まり、腰を下ろし、カメラを構え、すべてを味わいつつ行くこの時間がどんな楽しみにも増して豊かに思える、と言えば負け惜しみに聞こえるだろうか。