雪の急斜面を但馬東山の山頂に向かうと、登り着いた副峰に杉の大木が2本。
一本は太い胴が二つに割け、大方の枝も失って、それでも幹から小枝を生じてわずかに命脈を保っているのに、もう一本は枝を伸び伸びと広げた本然の姿でみごとに立ち枯れていて、その対照的な在りようが印象的だった。
青空をバックに鮮やかな後者に比べて、前者の姿は不細工このうえないが、さて、どちらを選ぶか。
あくまで己を持したあっぱれな死か、しぶとく年輪を重ねるための妥協と忍従か…。
そんな無用の思案にヘバリを紛らわせながら、冷たい風の中、ゆっくり山頂へ登り詰めた。
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