高山では登山者に恐ろしい罠を仕掛ける雪庇も、1000mそこそこの山では、稜線をアルペン的に彩り、そのうえ歩きやすいハイウェイを用意してくれるかなり嬉しい存在といえなくもない。
湖北金糞岳に花房尾から登ったら、ルートの後半は雪庇の上の空中散歩。
もちろん庇の下は谷底まで一直線の急斜面で、踏み抜いたりしたら只事では済みそうにないが、安全圏を確実にキープすればまずもって不安はない。
山頂を仰ぎ、谷を見下ろし、山肌を覆う整ったブナの林相や遠く連なる奥越の白い山並みを楽しみながらユラユラいい気分で進んで、さて振り返ると、稜線にはずっと途切れない足跡が続いていて、遠くには歩いてきた尾根も延々連なっていて、わが人生ではちょっとありそうにない自分の軌跡をクリアに確認できるこんな瞬間も、雪山が与えてくれる楽しみの一つなのだ。
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