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2002.10.4三伏小屋

 日本で一番標高が高いという峠を越えて、ダケカンバが明るく黄葉した谷を下って行くと、小さな小屋と気持ちのいいテント場があった。
 周囲はシラビソの白い幹に黄葉の混じる森で、谷の向こうには前衛峰が穏やかな姿で静まり、明日登る3000m峰の方へ差し招いているようだった。
 どこにも翳りや険しさのない高山の秋だった。
 さすがに夜は冷え込んだので、他に人の居ないのをいいことに、小屋の土間で煙ばかりの下手な焚き火をした。
 いがらっぽい喉にウイスキーが心地よく沁みた。