山麓の雪はすっかり消えているのに、なぜか林道のゲートは閉まっていて、登山者はぶつぶつ言いながら長いアプローチを余儀なくされる、そんな5月の山行も悪くない。
てくてく歩いていく道の両側には、ニリンソウやキクザキイチゲ、早春の花が可憐に咲き、いたる所に雪消の水がほとばしって、ついつい腰を下ろす回数が多くなる。
谷の向こうの山肌に、生まれたての緑と山桜のピンクが煙るように融け合っているのも、こんな時にしか目にできない彩りだ。
もちろん単調で長い水平移動に、ついに足と肩が不平を唱え始めるのを避けることはできないけれど、ようやく近づいてくる残雪の峰々は、鮮やかな輝きで登高を誘う。
|