標高1300mのこの平に転がっているのは、五衛門風呂の釜、錆びついたダルマストーブ、一升瓶・ビール瓶の無数のかけら…。 そして、かつてここにあった湿原の痕をとどめる谷地坊主、周囲に広がっていた原生林の名残の巨木の残骸、大木の切り株…。 人が来て、木を切り、(風呂に入って、酒を飲み)、森を無くし、水を枯らし、やがて人が去って幾十年か。 ある日、一人の登山者が来て、乾いた風の音のなかで一晩眠った。 人がここに来る前のこと、古木の森の深い静けさと、こんこんと湧いてやまない水の流れを、夢に見ながら。