冬の台高・明神平は、ほかの季節とは別の世界。 広い雪原をスノーシューで漕ぎ渡って、枝という枝が霧氷に覆われた真っ白な森に静々と進み入るのは、ほとんどスピリチュアルな体験だった。 たくさんの人が遊ぶ明神平から、ごくわずかな人が足を伸ばす明神岳へ、そしてまだ人の踏まない雪の上を笹ヶ峰へ。 まるで魔法にかけられたように輝く氷の衣に閉じ込められた椈の下を、一日さまよい続けた。