霧氷が見られたら、というほどの軽い気持ちで入った12月の大峰。
ふだんは道を濡らしているだけの清水が、厚く硬く凍結していて、足がすくむような氷の急斜面のトラバースを体験する羽目になった。
たった数歩だが、大げさではなく命がけの綱渡りを何とか乗り切って、今日はもうこれまでと逃げ下った谷で、川岸の壁に不思議な模様を見つけた。
水平だったはずの地層が、無秩序に曲がりくねった凄まじい褶曲の痕跡。
待ち受けていた氷の罠と、カオス的な地殻変動の名残と、今も人を苦行へ駆る信仰と、大峰は尋常ならざる力の凝る場所らしい。
そう感じると、鈴鹿の淡々しい疎林や、深い雪に眠る中国山地の山々の姿が、無性に恋しくなった。
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