織田信長も通ったという古い峠道は、今ではすっかり山道に帰って、時折登山者が通うばかり。 人が植えたとしか考えられない楢の古木のみごとな並木もあるが、年々朽ちて、一本一本倒れていく様子。 ただ峠近くに一株、めざましいミズナラの巨木があって、大枝を何本も突き上げた幹は今も逞しい。 この道に降り積もった時間の大いさ、足元を汗しつつ通り過ぎた営みの数を、野太い声で語っているような木だ。