新緑の山を歩いていたら、立派な水楢に出会った。 荒れた幹肌は無愛想だが、見上げると、周到に曲がりくねった枝が、寡黙に頑固に生きて、揺るがない知恵と風姿を身につけた老人のようだ。 大ぶりでやんちゃな感じの新葉が、その枝をにぎやかに被っているのは、老いての華やぎといったところか。 山の人気は断然、スマートで柔和な椈にあって、無骨な水楢は引き立て役だが、渇仰したくなるような老木は大抵水楢だ。 どっちが好きかと聞かれたら、今は椈だが、もう少ししたら分からないと答えるだろう。