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鈴鹿1999.8.13

 娘を連れて鈴鹿へ行った。
 一山越えて白い河原にテントを張って、思いっきり水遊びをする計画だったが、川は増水していて、空はどんよりと肌寒く、夜には雨さえぱらついたので、水かさを心配しながら寝袋にもぐり込んだ(雨雲は鈴鹿をかすめて東で牙を剥いた)。
 翌日は流れに沿って登山道を進んだが、これがまた、大人でも二の足を踏みたくなるような危ういトラバースの連続で、子供を叱咤しつつ、自分の迂闊に歯噛みした。
 山と天気を甘く見た親が招いた散々な行程に、しかし子供はごく自然にしたがった。
 それが山に入った者の、決まりだというように。
 最後の登りではあえぐ親を尻目にさっさと登り切って、峠の広場でおやつを食べた。
 家に帰れば駄々っ子に逆戻り、には違いなかろうが、この日、山は子供に何かを与えた。