大峰七面山の肩に、魅力的な平がある。 そこは、椈に囲まれた小学校の校庭ほどの広場で、真ん中には清水を湛えた小さな池がある。 平の草は柔らかく乾いていて、寝ころぶと新緑や黄葉に縁取られた青空が丸く、目をつむると、椈の幹をすり抜けて来た風の音や匂いに包まれる……。 もっとも、これは地図が紡いだ物語。 一度そこへ行こうとして、遠くから眺めただけで帰ってきた。 それで、今もかろうじて生きている物語。