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清荒神清澄寺
たこ焼き イカ焼 うどん ベビーカステラ…
はきもの 眼鏡 おもちゃ 盆栽…
気安い食べ物と雑貨の小店が長々と続くこの参道を登って
たぐいまれなあの仙境へ向かうのだ
御神籤の木箱を振る音に迎えられ
賽銭 鰐口 水掛不動尊 たえまない境内の響きをぬけて
色と筆触と濃淡とにじみと
目踊り 心楽しむ世界に浸るのだ
この人がいたことの
僕等の喜びを感じるのだ
富岡鉄斎
僕等に一番近くまで生きたこの国の画仙
そこでは 岩が奏でている
いきいきと洒脱な階調と 天才が閃く破調の
やさしく深い視覚のコラールを
憧れそのもののようなあの峰々の下で
青緑は人を魅する硬玉のほのめき
代赭は人をなごませる茗茶の香り
そして岩角の無骨な枝に散りばめられた
梅花の白のなんという可憐
人はあくまでも慎ましやかに
書を読み 庭を掃き 風景の中に杖を引き――
僕等もただ佇むのだ 桃源の住人となって
この時間を送るのだ 尽きない感受のうちに