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枯れた井戸
小石を投げ入れてみても
返ってくるのはつぶやきのような反響だけ
青空が広がり 風が吹き過ぎても
雪が降りこみ 土が凍てついても
何も与えず 何も期待されず
ただ時間が巡るのを見送っている
街道に光はあふれ
なめらかな水路に苔は緑を敷いて
沸き立つ女たちの生活の声に
深い水面までが一日揺れていた
そんな時もあったのに
何が閉ざしたのだろう
見えない所で世界に通じていた心を
何が断ち切ったのだろう
次々にあふれてやまなかった透明な歌の流れを
今はただ 虚ろな口が乾いた闇を抱いて
照る陽 浮かぶ雲を飲みこんでいるだけ
春になると風が花を運んでくる
幾百と知れない薄桃の花びらが舞いこんで
奥深い底まで光の粒子をとどける
あでやかな昔の夢が甦えるけれど
人知れずそれは色褪せていく