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縄文の土版に

最初にこの遺物を掘りだした人は
過去から新しい生がほとばしりでたような
不思議な時間の錯覚にとらわれたに違いない
赤ん坊の足型を残した古代の土版

親たちは無心にあばれる足をそっととらえて
念入りに柔らかくこね上げた粘土に
おごそかに押し当てたのだろう
足型はいまもふっくらと柔らかで
生まれたばかりの命の充溢と
それを見守る親たちのなごみを伝える

いまは消滅した数千年前の命の
みずみずしい質量が地上に残した形
それは無数に生まれ 無数に死んでゆく
ぼくら生命の連なりのなつかしい記憶そのもの