![]() |
![]() |
八軒家は三十石船の大坂側の発着点。現在の天満橋松阪屋の少し西から天神橋の辺りまで、大川岸になだらかな石段が敷きつめられ、昼夜となくたくさんの人が船を乗り降りするビッグターミナルだった。この絵のキャプションには次のような篠崎小竹の詩が掲げられている。 八軒屋畔客乗船 八軒屋畔 客 船に乗る 三大橋頭薄暮天 三大橋頭 薄暮の天 多少行人蓬底夢 多少の行人 蓬底の夢 一齊輾破水輪邉 一斉に転破す 水輪の辺 こちらに歌われているのは伏見への上りの川船の様子。「水輪」というのは、淀川に面して石垣を連ねていた淀城の、城内に水を導くために設けられていた有名な水車のこと。水車の音で目を覚ました夜船の客たち。船は淀城を過ぎるとまもなく伏見に到着するので、水車は風流な目覚ましの役割を果たしていたわけだ。蓬窓の夢といい、蓬底の夢といい、二つの詩の発想はよく似ている。 |