桃谷編

 
『浪華の賑ひ』に描かれた桃の名所“野中観音”


 キャプションには「玉造小橋の辺より天王寺までの間すべて一円の桃畑なれば、この野中といへる地はまつたく桃の最中にて、紅ゐ匂ふ花の盛りには天も酔へる光景なり。されば物いはぬ花の下を、人は口を休むることなくおもひおもひに諷ひつれつつ樽や瓢や花の枝うちかたげたる楽しみは、彼の桃源の仙境はいざしらず、その一時の栄花にて千歳も延ぶる心地なるべし」とある。