大坂城編
 
『大坂名所一覧』の大坂城


「大阪名所一覧」は五雲亭貞秀が描く大判錦絵で、大坂城から大坂湾までを上町の高台から眺望して描いたもの。大坂城には登城する武士の姿も見える。城北には東天満の家並みや桜宮方面の淀川堤の桜並木を前景に、遠く淀や山崎の方まで続く山河の風景が描かれている。


 
『淀川両岸一覧』京橋から見る大坂城


 画のなかに引用されている詩はやはり篠崎小竹のもの。

 木下人為天下君  木下の人 天下の君と為り
 威名遠向外夷聞  威名 遠く外夷に向かって聞こゆ
 層城萬仭宵漢凌  層城 万仭 宵漢を凌ぎ
 遙指朝鮮八點雲  遙かに指す 朝鮮八点の雲

 この詩では、秀吉の拡張政策がより露骨に讃えられていて、後の帝国主義につながる危うさも感じるほど。鎖国下の小さな平和は、社会からバランスのとれた国際観を失わせるのと反比例して、途方もない膨張主義の幻想を醸成しつつあったようだ。